人間として生まれた以上、集中力を発揮して、時間をかければ、
人ができることなら大概のことはできる。
それは年齢、性別、あるいは人種などには一切関係ない。
先日テレビで、98歳の木彫り師のインタビューがあり、
そのことを実感した。
その方の一言が振るっている。
「人は、日々進歩することが大切」
とても98歳の人とは思えない。
逆に、こんな考えを持っているから若々しいとも言える。
本来彼は木彫り師ではなく金属加工の職人であった。
木彫りは90歳を過ぎて始めた。
そんな人生の前半を送って来たものだから、
もともと手先が器用であることは間違いない。
私の解釈からすれが、毎日毎日、金属加工をやっていたから、
手先が器用になったとも言える。
まさに卵が先か、ニワトリが先か。
話を戻そう。
数年前に奥さんに先立たれ、茫然自失の生活を思って
いた時、娘さんが、自分の父親がこれではいけないと、
一本の丸太の切れ端を渡した。
「ねえ、お父さん、これで木彫りの動物でもつくってくれない!」
もともとの職人気質に火がつき、のめり込んだ。
できたのは確か熊。
出来上がった作品に対し、娘さんが「あら、とてもいいわね。
できたら絵本の世界を木彫りでつくってくれない」と。
このほめ言葉が心に火をつけた。
そしていろんな絵本の一こまを、彫刻で作り始めたのである。
馴染みの深い昔話の世界を次々と形にして行った。
特に、小動物たちが集まって食卓を囲んでいるような
複雑な風景を表現するのがお手のものとなった。
材料は木の切れ端。湘南に住んでおられるので、波に
打ち上げられた木材なども使うらしい。
そうこうしている内に、作品を見た孫娘がこう言った。
孫娘だから遠慮はない。
「おじいちゃん。おじいちゃんの木彫りは古臭いよ。
もっと今の子供たちが喜ぶようなものにして!」
もちろん孫娘と言っても、子供がいるくらいの年齢。
この一言で、闘争心が目覚めた。
西洋のおしゃれな童話の本の世界を表現しよと心に決めた。
四苦八苦、創意工夫している内に、感性が磨かれ、
彼独自の表現もできるようになったのである。
その作品が、たちまち子供たちの間で大人気。
評判が、評判が呼び、今では個展まで開いている。
インタビューを受け「やはり喜んでもらうと嬉しいね。
ますますやる気になる」と、おっしゃる姿はとても98歳とは思えない。
そして冒頭の言葉「人は、日々進歩することが大切」となる。
このようにいくつになっても、物事に興味を持ち、集中力を発揮すれば、
そこには素晴らしい世界が広がっているのである。
そんなエキサイティングな世界は、待っていてもやってこない、
積極的にいろんなことに興味を持ってチャレンジすることだ。
[わくわく成功講座 No.277]
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